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Very Best of RIKUGHI005「黒桟革 正倉院雪駄」
bespoke classic 六義RIKUGHI
Art&ClassiC
「黒桟革 正倉院雪駄」
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いまから1300年あまりも昔もことだ、天平の革職人は「白鞣し」を基に独自の工夫を加え驚くべき「革」をつくりあげている。その独創性は古代という「時間」ゆえに生まれたのか?
そのひとつの代表がこの「黒桟革」である。
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「黒桟革」は赤穂の塩と菜種油のみで鞣した「白鞣し」の革を
松の枝で燻し、
それをまた蒸してふたたび塩と菜種油で鞣す。
そしてこの鞣された革に「漆」を塗りこめていくのだ。
「漆」は漆器のものとは異なり革専用として練られたものだそうだ。それも2種類の「漆」を塗り込める。
ひとつは地塗り用の漆で何十回にわたって丹念に塗りこめる。
そのあとに鞣す際に揉まれてできたシボを輝かせるための漆がやはり何回も塗り重ねられる。
この深い漆黒は日本の「漆」の色なのだ。
「六義黒桟革」の魅力はたっぷりとしたこの「漆黒」にある。
宝石に似た煌めきがガルーシアを思わせるがそれよりももっと古代の「野生」と気高さを感じさせる。
「荒ぶる神」の化身なのだ。
(黒桟革も白鞣しとおなじく類似品が多い、黒桟革は古代から続く鞣し方で「白鞣し」と燻し、蒸しを経た再度の「白鞣し」をすることによって強靭で美しい革が生まれるが、
「白鞣し」を使っていないものや、「松葉の燻し」、それを「蒸してからの再度の白鞣し」を省いてただ牛革に漆をかけただけのものがほとんどである。
悲しいことにフランスのレザーフェアで受賞した「黒桟革」も「白鞣し」の革をつかっていない。)
■天平の革を復原するには相当の「体力」がいる。
例えば革の毛をそぐにも石灰を使わず、川底に革を沈めて発酵させそれを小刀で腰をかがめながらこそぎ落としていくのだ。
「復原」のひと段階を登るごとにいかに現代人が「機械」や「化学」をつかって「時間」や「労力」を省いてきたかを思い知る。
古代の「革」を復原することは古代の「時間」と向き合うことであった。
「古代の時」と「現代の時」をタイムマシーンのつまみを調整するように同期することで理屈では発見できない「力のある美しさ」が現出したことにひたすら歓びを感じる。
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銀座東京